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はじめに
うつ病の診断により休職した労働者の復職に際し,リワークを利用する休職者は増加している。復職支援を目的としたリワークプログラムにおいては,精神疾患が再発せずに復職できる状態にあるかどうかを示す「復職準備性」を高めるプログラム構成であることが大切であり,横山は「新しい自分らしさの獲得こそがうつ病の治療としても,リワークプログラムとしても目指すべきものである」と指摘している(横山,2011)。一方,重篤な精神疾患を持つ人が自分らしい生活を送ることができるように支援するために開発され,その後,うつ病や不安症などさまざまな精神疾患の治療に取り入れられるようになっている「リカバリーを目指す認知療法」(以下,CT-R)もまた自分らしさの獲得を目標としている(Beck et al, 2021)。CT-Rでは,「アスピレーション」と呼ばれるその人の夢や希望,「適応モード」と呼ばれる自分らしさの体験とともに,人間的な「つながり」の体験がその人の人生を充実させることが重要視されている。「つながり」は当院リワークでも重視されていて,メンバー同士助け合い,楽しみながらお互いを尊重し高め合う「仲間体験」を大切にしたプログラムを提供し,復職支援を行っている。そこでは,個別プログラムの他,メンバーがチームで楽しみながら,組織で働く上で必要なスキルを身につけることができる集団プログラムを取り入れている。こうしたプログラムの終了時に「この病気になったからこそ見える景色があった」「自分を褒められるようになった」「メンバーの前向きな姿をみて,自分も頑張ってみようという気持ちを実感している」など自分らしい生き方の発見を言葉にするメンバーも多い。また,当院リワークを終了したメンバーの「OB参加」も活発に行われている。このように利用者とOBが交流を行う場ともなっている当院リワークは,「つながり」を重視するCT-Rの考え方を取り入れた認知行動療法のアプローチをすでに実践しているとも言える。そこで今回,当院のリワークプログラムをCT-Rの観点から概観してみたい。

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