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医療体制の変化と脳卒中リハビリテーション
脳卒中後のリハビリテーションに最も必要なものは「継続性」であろう.しかし,2000年に回復期リハビリテーション病棟が新設され,リハビリテーション医療は急性期・回復期・維持期の3つに専門分化された.急性期病院では救急患者をスムーズに受け入れて,組織プラスミノーゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator;tPA)に代表される超急性期治療に専念し,機能回復のためのリハビリテーションは主に回復期病院で行われるという流れができ始めた.加えて2008年から脳卒中にも地域連携クリニカルパス(連携パス)が算定できるようになり,在院日数の制限も厳しくなったことから回復期病院との連携がますます促進され,急性期病院におけるリハビリテーション実施期間は本当に短くなり,病床利用率が低下した結果,ベッド数を削減する病院も見受けられる.この仕組みは脳卒中の急性期医療を普及させるという点では確かに有効であったと思われるが,リハビリテーションの継続性という観点からみると,まずは医療と介護に大きく二分され,さらに医療リハビリテーションのなかでも急性期・回復期・維持期の3つに分断されたと言える.
かねてから就労年齢患者のゴールは自宅退院ではなく,そのまた先にある復職をもって初めてゴールであるといわれてきたが,連携パス普及から5年も経過すると,回復期病院転院時までしか患者の状態変化を知ることができないスタッフが急増してきた.もちろんこれは彼らの責任ではないが,急性期病院では自宅退院という患者のゴールさえ知ることができない医療人が年々増加しているのである.同様に回復期では急性期の病態を知らないスタッフが増えている.しかも現行のモデルでは維持期は介護保険が主体なので,どうしても高齢者が対象の主体となり,復職支援のノウハウはないといっても過言ではない.また,急性期・回復期では入院リハビリテーションに特化している病院が多く,医療制度上の問題で若年脳卒中患者は自宅退院後の手段的日常生活動作(instrumental activity of daily living;IADL)を向上させるためのリハビリテーション治療を受けることが困難となっている.
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