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はじめに
現在,学校現場においては児童・生徒によるいじめ,暴力行為,不登校などが増加している。2022年度の小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数は68万1,948件(前年度61万5,351件),小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は9万5,426件(前年度7万6,441件),小・中学校における不登校児童生徒数は29万9,048人(前年度24万4,940人)であり,それぞれ2021年度から6万6,597件(10.8%),1万8,985件(24.8%),5万4,108人(22.1%)増加するなど,憂慮すべき状況が続いている(文部科学省,2023a)。
このような学校生活上の諸問題に対する指導や支援に際して,教師はさまざまな心理的負荷を抱えている(笠井,2018)。文部科学省(2023b)によると,2022年度の公立学校教員の病気休職者数は8,793人(在職者全体91万8,987人の0.96%)であった。そのうち,精神疾患による病気休職者数は,6,539人(全教育職員数の0.71%)で,2021年度(5,897人)から642人増加し,過去最多となった。2023年4月の時点で,精神疾患による病気休職者の39.9%は復職しているが,40.7%が引き続き休職しており,19.4%はすでに退職している。休職期間が1年以上にわたる場合も31.7%に上り,教師のメンタルヘルスが依然として深刻な状況であることがわかる。
これまでの教師の休職や退職に関する研究からは,現職の小・中学校教師の約4割が,日ごろから休職や退職を意識していることが示されている(小橋,2013;草海,2014)。また,保護者,同僚,児童・生徒,校務などに対するストレスが教師の休職・退職意識を高めることも明らかにされている(草海,2014)。学校の最高責任者である校長の重要な職務として,教師の人事管理がある。校長は学校教育活動が支障なく運営されるべく,教師の心身の健康に留意しなければならない。これは職場の管理監督者に課せられる安全配慮義務の一つである(中島,2003)。文部科学省(2012)も,「教師のメンタルヘルスケアを行うキーパーソンは管理職であり,管理職による適切なバックアップが行われなければならない」として,校長の役割の重要性を示唆している。
しかし,実際には,教師のメンタルヘルスと校長との関係はどのようになっているのだろうか。学校という職場環境では,自分のクラスのことは自分で対応してほしいとの思いから,周りの教師も介入を遠慮する風土があるが,校長が早めにフランクに介入していくような学校では,教師のメンタルヘルスの不調が少ないとされている。一方,教師のメンタルヘルス不調がたびたびある学校では,校長が各教師の状況をあまり把握していないことが指摘されている(文部科学省,2012)。
本稿では,これまでに行われてきた研究や公開されている資料などを概観し,教師のメンタルヘルスと校長との関係から見えてくることを整理する。なお,本稿の趣旨に照らし,引用した文献中に記されている「管理職」「上司」は,「校長」と同意として扱った。

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