特集 先生は大変だ―「先生たち」のメンタルヘルスを通して見えるもの
教師のこころが折れるとき―教師の三つのクライシス
松浪 克文
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1関東中央病院メンタルヘルスセンター
pp.820-826
発行日 2024年12月5日
Published Date 2024/12/5
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はじめに
平成21年より年間5,000人台で推移していた公立学校教師の精神疾患による休職者数が,令和4年は6,539人に急増した(文部科学省,2013,2023)。教師の精神疾患のこのような異常増加傾向は過去約30年強にわたって続き,地域差を超えて全国の教育現場に見られる。この特異な現象について考えるためには,デュルケームの言う〈社会的事実〉(Durkheim, 1985)つまり,「個人の外にあって個人を拘束する,集団に共有された行動・思考様式」を把捉することが必要ではないだろうか。本稿では,各所で指摘されてきた具体的な個々のストレス因(量的仕事量の増加,残業時間や保護者対応,部活顧問の負担,パワーハラスメント)について再説するのではなく,それらの基底に潜在する,通常は見えづらい構造的要因を描くことを試みた。統計的データを提示するわけではないので,本稿での議論はこの領域の先達の知見(井上,2015;Lortie, 2021;中島,2003;佐藤,1997)を参照したうえで,関東中央病院メンタルヘルスセンターの臨床データをもとに行った臨床経験主義的な推論にすぎないことをお断りしておく。

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