投稿論文 症例研究
転移の多面的コンステレーションに関する一考察―乳幼児同伴面接から
太田 百合子
1
1白百合女子大学
キーワード:
β要素
,
α機能
,
転移のコンステレーション
,
精神分析的心理療法
Keyword:
β要素
,
α機能
,
転移のコンステレーション
,
精神分析的心理療法
pp.732-741
発行日 2024年10月5日
Published Date 2024/10/5
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乳幼児期の子どもがいる母親には,個人の未解決の葛藤が育児不安や困難として表現されることがある。しかし一人になることが難しいという理由から,個人心理療法の実践が難しい場合がある。今回私は,ある症例において乳幼児同伴の精神分析的心理面接を経験した。本面接は,環境調整を主に主治医に委ねることで,患者の心的葛藤に焦点をあてることが可能となった。このような構造の心理療法を詳細に検討した研究はほとんど見られず,本論文ではその特徴を考察した。本面接設定は,面接室に乳幼児が存在することが,患者の無意識的な依存欲求を賦活させる。また乳幼児の泣き声は,甘えた泣きから大声で泣く号泣まであるが,原情動的な具象水準の思考(β要素)が面接室に大量に排泄されることが,本構造の特徴である。そのため治療者の考える機能を,いかに維持できるかが治療の鍵となる。面接室全体に展開していたのは,母親の転移的世界であり,そこでは治療者への転移と同時に,同伴している子どもにも無意識的に役割が託され,多面的な転移のコンステレーションが浮かび上がることが認められた。この転移の中で,患者の原感覚的・原情動的な具象水準から象徴水準の思考へと進展し,本質的な葛藤を扱うことが可能となった。また本面接は,その役割が終われば,個人心理療法に移行が認められ,その架け橋の役割を果たし,精神分析的心理療法のプロセスの一部と捉えることが可能といえる。

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