特集 みんなのCBT――社会実装の未来とニュー・フロンティア
身体集中反復行動への支援というニュー・フロンティア(未開拓領域)
石川 亮太郎
1
1大正大学臨床心理学部臨床心理学科
pp.188-192
発行日 2026年3月10日
Published Date 2026/3/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp26020188
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I 身体集中反復行動の概観
身体集中反復行動は,近年新たに開拓された新規の問題,世間で注目されている流行のトピック,というわけではない。その有病率は決して低くはないにもかかわらず,どちらかといえばマニアックで,限定的な領域の話題として扱われてきた。治療に関する研究や報告も,他の精神疾患と比べて著しく少ない。具体的な支援に関する議論や教育がこれまで十分に行われてこなかったせいか,専門職においても当該分野に関する知識や情報は限定的にしか共有されていない印象がある。
実際,米国の医師や心理師を対象にした調査において,「抜毛症の当事者に提供できる情報資源がある」と回答した専門家は10%にも満たないという結果もある(Marcks et al., 2006)。また,皮膚科医および精神科医の90%が,皮膚むしり症の当事者およびその家族に対するリソースや心理支援を認識していないことが報告されている(Jafferany et al., 2010)。
本邦ではこのような調査は行われていないが,身体集中反復行動に関する認識には同様の傾向があると考えられる。このような状況は,当事者の立場からしたらあまりに不実な問題である。当事者は,誰に相談すればよいのかわからないまま,専門的治療を受けられず苦しみ続けている可能性が高い。本稿は,身体集中反復行動が「単なる癖」ではなく,専門的治療を要する疾患であることを明確にし,あわせて有効と考えられる具体的なアプローチについて,より広い理解を促進することを目的とする。

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