総説
見落とし・遅れ・誤診—診断関連エラーという未開拓地
相馬 孝博
1
1千葉大学医学部附属病院 医療安全管理部
pp.142-146
発行日 2018年2月1日
Published Date 2018/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210652
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■はじめに
昨今,「画像診断報告が見落とされたため,患者の治療が遅れてしまった」という医療事故が少なからず報告されている.このような診断の見落とし(missed diagnosis)や診断の遅れ(delayed diagnosis)は,見るべきものを見なかった,あるいは伝えるべき情報を伝えなかったということで,法的には(期待されている行為をしない)不作為と呼ばれている.また誤診(misdiagnosis)も,単純な実力不足から診断困難事例に至るまで,その範囲は非常に広い.診療を行うためには,診断(diagnosis)という絶えざる行為が不可欠であるが,診断の過程と結果における失敗は,「診断関連エラー(Diagnostic Error)」と総称され,医療安全の観点から,近年非常に注目されるようになった.なおdiagnostic errorは直訳すれば,診断エラーまたは誤診となるが,これらの訳語を採用すると,診断「過程」のエラーである見落としや遅れを包含することが難しいと思われるため,本稿では診断関連エラー(以下,DE)と呼ぶことにする.
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