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I はじめに
本邦では自殺者全体の数が減少傾向にある一方で,小中高生の自殺率は近年上昇し,2024年度には統計開始以来の過去最多を記録した(厚生労働省,2025)。また,10代から20代の死因の第1位が自殺であるという現実は,社会全体が青少年の抱える心理的苦痛に十分応答できていないことの表れともいえる。青少年期は,周囲の影響を受けながら,仲間集団などで社会性を発達させ,一人の大人として自己を確立する時期である。この時期に外傷的出来事を体験すると,自己や他者への信念や世界観が大きく揺らぎ,人生に長期的な心理的影響を及ぼす可能性がある。さらに,青少年期は心理的苦痛が高まっていても周囲へ助けを求めず,つらさを言葉にできないまま孤立する若者が少なくない。医療機関の受診率は成人より著しく低く(Merikangas et al., 2011),支援につながった時点ではすでに重症化している場合も多い。
思春期から青年期のトラウマ支援は,早期介入の必要性が指摘されながらも,臨床実践の体系化が遅れてきた領域である。こうした課題に対して,成人を対象に発展してきた認知処理療法(Cognitive Processing Therapy : CPT)をもとに発達特性に応じた形で開発したのが,青少年のための認知処理療法(Cognitive Processing Therapy for Adolescents and Young Adults with Post-traumatic Stress Symptoms : CAYAP)である。筆者らは成人を対象にしたCPTのランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial : RCT)で経験した若年者の事例をもとに,CPTの青少年用プログラムであるCAYAPを開発した(JSPS科研費 JP17K04483)。本稿では,CAYAPの理論的背景と臨床的意義を紹介し,青少年期における新たな認知行動療法の展開としてその可能性を考察する。

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