特集 虚血性心疾患
治療 様々な病態を示す冠動脈疾患に対する治療update
冠攣縮性狭心症の薬物治療
清末 有宏
1
1森山記念病院循環器センター
キーワード:
▶PCIを実施すれば一旦の症状消失が達成できる器質的狭窄による狭心症とは異なり,冠攣縮性狭心症患者では治療しても症状の完全な消失を得ることがしばしば困難である.
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▶冠攣縮性狭心症の薬物治療について見ていく前に,生活習慣や自律神経との関わりが深い疾患であるため,非薬物治療も重要である.
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▶冠攣縮性狭心症の危険因子の中でも喫煙のリスクが突出していることが報告されており,禁煙指導が徹底されるべきである.
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▶飲酒は一般的な動脈硬化の危険因子には含まれないが,冠攣縮性狭心症に特徴的な危険因子としてよく知られている.
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▶カルシウム拮抗薬が冠攣縮性狭心症治療の第一選択薬であることは論を俟たない.
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▶硝酸薬は発作解除以外に長時間作用型による発作予防にも適応があるが,硝酸薬の血中濃度が一定であると耐性が生じやすいとされている.
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▶ニコランジルは硝酸薬・カルシウム拮抗薬とも異なる薬理作用を有するため,併用することによる効果が期待できる.
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▶β遮断薬は単独投与禁忌でカルシウム拮抗薬と併用する.
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▶その他にも多くの薬剤がクラスⅡbとしてガイドラインに紹介されているが,いずれも基本的には適応外使用となり,併用は限定的とせざるを得ない.
Keyword:
▶PCIを実施すれば一旦の症状消失が達成できる器質的狭窄による狭心症とは異なり,冠攣縮性狭心症患者では治療しても症状の完全な消失を得ることがしばしば困難である.
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▶冠攣縮性狭心症の薬物治療について見ていく前に,生活習慣や自律神経との関わりが深い疾患であるため,非薬物治療も重要である.
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▶冠攣縮性狭心症の危険因子の中でも喫煙のリスクが突出していることが報告されており,禁煙指導が徹底されるべきである.
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▶飲酒は一般的な動脈硬化の危険因子には含まれないが,冠攣縮性狭心症に特徴的な危険因子としてよく知られている.
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▶カルシウム拮抗薬が冠攣縮性狭心症治療の第一選択薬であることは論を俟たない.
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▶硝酸薬は発作解除以外に長時間作用型による発作予防にも適応があるが,硝酸薬の血中濃度が一定であると耐性が生じやすいとされている.
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▶ニコランジルは硝酸薬・カルシウム拮抗薬とも異なる薬理作用を有するため,併用することによる効果が期待できる.
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▶β遮断薬は単独投与禁忌でカルシウム拮抗薬と併用する.
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▶その他にも多くの薬剤がクラスⅡbとしてガイドラインに紹介されているが,いずれも基本的には適応外使用となり,併用は限定的とせざるを得ない.
pp.1570-1574
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.10_022
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はじめに
冠攣縮性狭心症に対する薬物治療に関するガイドラインとしては「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)1)」が長らく最新のものとなっていたが,最新の知見を追加し日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会の合同ガイドラインとして「フォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療」2)が10年ぶりに2023年3月10日付で発出された.本稿においてはこれらのガイドラインをベースに,筆者の冠攣縮性狭心症治療経験も加味しながら薬物治療について述べる.実際に筆者も20年以上循環器内科専門外来を担当しているが,単に冠攣縮性狭心症患者数が思いのほか多いというだけではなく,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施すれば一旦の症状消失が達成できる器質的狭窄による狭心症とは異なり,冠攣縮性狭心症患者では症状の完全な消失を得ることがしばしば困難なため,患者の不安も強く診察に時間もかかり,一回外来あたりの冠攣縮性狭心症の管理に割かれるエフォートは少なくない印象がある.なおフォーカスアップデート版発出の大きな目的は,近年急速に注目を集めている冠微小循環障害に関する新たな知見の共有,ということだったかと思われるが,そちらに関しては次稿を参照されたい.

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