特集 関節リウマチ
総説 関節リウマチ─診断と治療の進展
関節リウマチの病態理解の進歩
松本 功
1
1筑波大学医学医療系膠原病リウマチアレルギー内科学
キーワード:
関節リウマチの病態理解の進歩
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▶近年の患者検体である末梢血や関節滑膜の単細胞解析を含む新たな解析により,RAの自己免疫応答の解明が飛躍的に進んでいる.
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▶RAでは70%以上の患者群がACPA,RFなどの自己抗体産生を伴う.
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▶RAではT細胞にeQTLが多いことが指摘されており,特に制御性T細胞に多く認められる.
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▶ACPA陽性のRA患者では口腔内,肺でのシトルリン化,およびそのタンパクに対する免疫応答が誘導されることが発症の引き金になることが考えられている.
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▶抗CCP抗体は高い感度,さらにRA発症前(およそ平均7年前から陽性になっているといわれている)から同定されるため,診断,予後予測(特に骨破壊に関して)には明らかに優れたマーカーである.
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▶RFのエピトープはIgMではRA,シェーグレン症候群ではFc部分のelbow領域に,健常人ではelbow領域とtail領域に多い.
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▶IL-6は主にサブライニングの滑膜細胞やB細胞が,TNF-αはマクロファージ,T細胞などが産生している.
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▶炎症関節局所に多く存在するTphはリンパ節でのリンパ濾胞を形成するために必要なケモカイン受容体であるCXCR5を発現しておらず,PD-1を高発現する新たな細胞群として同定された.
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▶関節滑液に多く存在する好中球は,NETを誘導する.
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▶高精度医療へのアプローチとして,関節局所細胞の分子レベル,組織レベルでの解析により,B細胞が多いものでは抗CD20抗体の有効性が高く,少ないものではIL-6阻害薬の有効性が高くなる.
Keyword:
関節リウマチの病態理解の進歩
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▶近年の患者検体である末梢血や関節滑膜の単細胞解析を含む新たな解析により,RAの自己免疫応答の解明が飛躍的に進んでいる.
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▶RAでは70%以上の患者群がACPA,RFなどの自己抗体産生を伴う.
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▶RAではT細胞にeQTLが多いことが指摘されており,特に制御性T細胞に多く認められる.
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▶ACPA陽性のRA患者では口腔内,肺でのシトルリン化,およびそのタンパクに対する免疫応答が誘導されることが発症の引き金になることが考えられている.
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▶抗CCP抗体は高い感度,さらにRA発症前(およそ平均7年前から陽性になっているといわれている)から同定されるため,診断,予後予測(特に骨破壊に関して)には明らかに優れたマーカーである.
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▶RFのエピトープはIgMではRA,シェーグレン症候群ではFc部分のelbow領域に,健常人ではelbow領域とtail領域に多い.
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▶IL-6は主にサブライニングの滑膜細胞やB細胞が,TNF-αはマクロファージ,T細胞などが産生している.
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▶炎症関節局所に多く存在するTphはリンパ節でのリンパ濾胞を形成するために必要なケモカイン受容体であるCXCR5を発現しておらず,PD-1を高発現する新たな細胞群として同定された.
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▶関節滑液に多く存在する好中球は,NETを誘導する.
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▶高精度医療へのアプローチとして,関節局所細胞の分子レベル,組織レベルでの解析により,B細胞が多いものでは抗CD20抗体の有効性が高く,少ないものではIL-6阻害薬の有効性が高くなる.
pp.1168-1172
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.08_007
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はじめに
関節リウマチrheumatoid arthritis(RA)は有病率が約1%と頻度が高い,関節病変を首座とする自己免疫疾患である.近年の患者検体である末梢血や関節滑膜の単細胞解析を含む新たな解析により,RAの自己免疫応答の解明が飛躍的に進んでいる.また,炎症性サイトカインやT細胞共刺激分子をターゲットとした生物学的製剤,ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬など有効な治療法が数多く登場し,臨床的寛解を早期に目指すことが提唱されている.適切な薬剤選択を含めて,precision medicine(高精度医療)に向けてのアプローチも可能な時代も近いかもしれない.本稿ではRAの病因を,pre-clinicalステージである全身的自己抗体産生から,病態発症・慢性化の素地となる関節での局所応答を各過程に分けて詳述し,昨今の単細胞解析からみえてきた最新のトピックについてまとめる.

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