特集 食品安全の最前線―感染症の観点から―
2.食中毒と行政の関与
服部 大
1
1元東京都食品衛生監視員
pp.15-22
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0108.03.02_0015-0022
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平成30年6月,15年ぶりに食品衛生法(以下,「法」)が改正され,下げ止まる食中毒発生状況を踏まえ,衛生管理の国際標準であるHACCPの制度化などとともに,広域発生する食中毒への対策強化が図られることとなった1).食中毒発生状況は時代によって変遷している.昭和時代は寿司など鮮魚の生食による腸炎ビブリオ食中毒や,手洗いの不備が引き起こすおにぎりなどを原因とする黄色ブドウ球菌食中毒が主要な食中毒であった.これら細菌性食中毒は夏場に発生することが多く,食中毒対策は夏が山場であった.現在では生カキが流通する冬に多発するノロウイルス食中毒や,生または加熱不十分の鶏肉が原因のカンピロバクター食中毒,サバなどに寄生するアニサキス食中毒がトップスリーを占め,通年の食中毒対策が必要である(図1,図2,図3)2).また,近年,腸管出血性大腸菌による広域発生食中毒が年に数件発生し,平成28年には千葉県と東京都の高齢者施設で死者10名の悲惨な事件が発生した3).法の目的は,「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し,国民の健康の保護を図ること」であり,行政は適切な食中毒対策を講ずることが求められる.本稿では,保健所などで35年間勤務した筆者の視点から解説を試みる.
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