病気のミニ世界史
食中毒
大熊 房太郎
pp.42
発行日 1971年1月1日
Published Date 1971/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661915878
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いまごろは,わが国ではフグ中毒が多くなる季節ですが,この食中毒のことが記録になって残っているのは江戸時代になってからで,俳人・松尾芭蕉なども「あら何ともなやきのふは過ぎてふぐと汁」と詠んでいます。
当時はフグは俗には“テッポウ”とよばれていましたが,これは鉄砲からきたことばで,あたれば(中毒すれば)かならず死ぬ……というので,そういう異名がつけられたわけです。もっとも,“富”というよびかたもあり,これは「富くじ」(いまの宝くじのようなもの)の富をとったことばで,めったにはあたらない(中毒しない)…という江戸っ子の皮肉なシャレからきたものです。
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