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ホルモン受容体陽性HER2陰性の転移再発乳癌の治療として,タモキシフェン(SERM),アロマターゼ阻害薬(AI;アナストロゾール,レトロゾール,エキセメスタン),フルベストラント(SERD)といったホルモン療法に,分子標的薬が併用された治療が標準治療として普及している。腫瘍量が多く,癌の進展速度が速い場合は,化学療法の実施が望ましい場合もある。ホルモン治療が適応となる患者においては,可能な限りホルモン療法を継続することがHortobagyiにより報告1)されているが,その後に複数の分子標的薬が登場し,ホルモン療法との併用が標準と考えられるようになってきている。しかしながら,分子標的薬は有効性が証明されている治療ラインがあることや,その適応が示された時代には存在しない薬剤が登場していることなど,治療シークエンスの最適化はシンプルではない。特に,mTOR阻害薬であるアフィニトールとエキセメスタンの併用療法が二次治療,三次治療での有用性が示されており,CDK4/6阻害薬であるパルボシクリブ,アベマシクリブは一次治療としてAIとの併用,ならびに二次治療でフルベストラントとの併用で有用性が示されている。mTOR阻害薬とCDK4/6阻害薬の投与例において,前治療には互いの薬剤投与例は含まれていない。一次治療においてAI単剤投与でコントロールが期待されるような,リンパ節転移や骨転移の単独病変のような病勢が緩やかな状態においても,CDK4/6阻害薬での無増悪生存期間(PFS)の延長に有用であることが報告されている2)。一方,AIと比較してフルベストラントの有用性がFALCON試験3)でも示されているが,薬剤の副作用コントロールの簡便さ,医療費,内服忘れなどの予防としての注射剤の選択など,治療選択にはさまざまな患者嗜好や患者背景も含めて考えなければならず,必ずしも一様ではない。以上より,ホルモン受容体陽性再発乳癌に対し,一次治療ではCDK4/6阻害薬の強固なエビデンスがあることと,mTOR阻害薬のエビデンスが二次治療以降であることから,一次治療においてAIと併用すべきはCDK4/6阻害薬か,mTOR阻害薬かについては比較できない。そこで,本稿では前治療としてAI投与歴のある症例の二次治療としてAIと併用すべきはCDK4/6阻害薬か,mTOR阻害薬かについて検討することとした。また,内分泌療法としては,『乳癌診療ガイドライン 2018年版』で採用されている定義の,転移再発後に最初に行う内分泌療法を一次治療,その次の内分泌療法を二次治療と扱っている。●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。また,特定の薬剤の誹謗をするものではありません。・論点整理/南博信・「CDK4/6阻害薬を併用すべき」とする立場から/河村雪乃/下村昭彦・「エベロリムスを併用すべき」とする立場から/古川孝広
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