連載
グラビア・目で見る遺伝子異常と婦人科内分泌疾患 ―早発卵巣不全―
河村 和弘
1
1聖マリアンナ医科大学産婦人科学准教授・生殖医療センター長
pp.4-7
発行日 2017年12月1日
Published Date 2017/12/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.24.04_0004-0007
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女性の閉経時期は人種や時代にかかわらず50~52歳と一定である。しかし,40歳未満で閉経する早発卵巣不全 (primary ovarian insufficiency;POI) では,高ゴナドトロピン,低エストロゲン血症を特徴とする卵巣性無月経を呈する。POIは稀な病気ではなく,40歳未満の女性の1%,30歳未満では0.1%の女性に発症する1)。POIでは骨粗鬆症,変形性関節症,心血管系疾患のリスクが高くなると同時に,排卵障害による不妊となる。POIでの妊孕性の喪失は,急激な卵巣内の卵胞の減少や胎児期の原始卵胞形成不全による生下時の初期卵胞プールの減少により,早期に卵巣内の残存卵胞が枯渇することが原因とされている。POI の原因は単一ではなく,自己免疫疾患,内分泌代謝疾患,医原性疾患(卵巣手術,化学療法,放射線療法)など複数存在する。また,一部のPOI症例は症候性であり,ターナー症候群 (Turner's syndrome;TS) や眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群 (blepharophimosisptosis-epicanthus inversus syndrome;BPES) type 1などが知られている2)。しかし,50~90%は特発性であり,かなりの数の遺伝子異常が含まれている可能性がある。実際,遺伝的な閉経時期は母子間で44~65%は関連性があり,母親の閉経時期が早い場合には子のPOIの発症頻度は6倍高くなると報告されている3)。
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