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1 概 念
一般女性に卵巣機能停止は40代後半から50代にかけて起こる.エストロゲン分泌の低下により約半数の人にほてりや腟乾燥感があらわれる.しかし,もっと早期の年齢でこのようなことが起こる場合がある.本病態を早発卵巣不全(premature ovarian failure : POF)という.40歳以下の女性の1%に,45歳以下の女性の5%に起こるといわれる.早期卵巣不全は一般に40歳未満での継続的月経の停止(4か月以上または6か月以上),高ゴナドトロピン,低エストロゲン状態と定義される1).従来,本病態を分けて早発閉経(Prematuremenopause,卵胞残存なし),ゴナドトロピン抵抗性卵巣(gonadotropin-resistant ovary,卵胞残存あり)の用語が用いられた2,3).しかし,診断のために卵巣生検を行い,卵,卵胞の有無を検討することの臨床的意義が疑問視されており,治療に反応するか否かで判断する方法がとられるようになった.したがって両者を合わせた用語としてのPOFの病名が使われるようになっている.なお本病名に関しては最近premature ovarian insufficiencyという用語が用いられることもある4).ここでは現時点で日本産科婦人科学会用語集に掲載されている,POFを用いておく.POFの年齢について諸国で定義が異なる.わが国では明確ではないが産婦人科用語集では「40歳未満での卵巣性無月経.本症には早発閉経とゴナドトロピン抵抗性卵巣症候群の両者を含む」と規定されている.英国閉経学会では45歳としている.POFは早期のエストロゲン欠乏状態により,骨塩量低下,心血管系変化などが懸念され,ホルモン補充療法が必要であることはいうまでもない.稀ではあるが妊娠も報告されている(0.09~8.2%).
本疾患は原因が必ずしも明確ではないが,挙児希望の有無も含めて患者生涯にかかわるトータルケアが必要である.
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