特集 発達障害~適切な支援のための医療とは~
特集にあたって
神尾 陽子
1
1国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部 部長
pp.7-8
発行日 2019年8月20日
Published Date 2019/8/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.37.08_0007-0008
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- 文献概要
本特集でも用いる「発達障害」は,わが国で定着している法律用語でもあるが,昨年6月に世界保健機構(WHO)が公表したICD-11では「神経発達障害」として括られた診断群から,知的障害のみのケースを除いた,自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)などを中心とする症候群である。発達障害はまだ病因の特定には至らないものの,出生前後からの脳の非定型発達を辿る結果,高次脳機能の不全(決して機能の減弱だけなく,機能亢進も伴う)を呈し,複雑な情報処理を要求する社会的場面での深刻な不適応を招きうるヘテロな病態である。今日では地域のおよそ10%の人々に見積もられ,その大部分が知的障害を伴わないこともわかっており,社会にとって発達障害は身近な問題という認識が定着してきた。それに伴い,地域での支援体制も見直しを迫られるようになり,かつてのように数少ない専門機関(重心病棟,養護学校,障害者向けの福祉施設など)だけに依存した体制から脱却し,地域全体で取り組むための既存組織の改編が始まっている。
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