特集 近代日本の宗教と精神医学
巻頭言
特集にあたって
荻野 恒一
1
1東京都精神医学総合研究所
pp.1238-1239
発行日 1976年12月15日
Published Date 1976/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202556
- 有料閲覧
- 文献概要
昨年1月から本誌の編集委員に当てられたため,昭和45年以来12月号の特集テーマになってきた「社会精神医学」の編集を,昨年から加藤正明氏と共同で行なうことになった。この特集号には2,3回参加してきたわたしも,編集の立場に立つと,つくづく大変だなと思う。社会精神医学というものを広くとって,生物学的精神医学や狭義の精神病理学に対応する新しい精神医学の領域として展望し,この視点から特別の今日的主題を選択するということは,けっして容易ではなく,さらに決められた主題を展開するために適当な方方を選び,執筆を依頼する作業も,時には困難だからである。しかしこれはわたし個人の感想であって,ベテランの先輩,加藤氏は,じつに手ぎわよく,事を進めていって下さった。
「宗教と精神医学」という主題は,わたし自身は久しく温ためてきたものであり,宗教精神病理学は30年来,いつかは本格的に手がけたいと考えてきたものであった。しかしこの主題を社会精神医学の立場からとりあげることには,いままでためらいがあった。このためらいはしかし,精神医学を専攻してきたわたしのそれではなく,むしろ一定の宗教を信じる信仰者としてのわたしのそれであったと思う。だがわたしは今日,宗教というものを従来以上に社会的ないし歴史的視点から考える必要があり,またそのような傾向があらゆる宗教界の内部で起こってきている,と考えている。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.