Special feature 一人ひとりの管理と実施で解決 手指の健康と手指衛生
■Nursing care 看護ケア別『手指衛生の5つのタイミング』の実践
❷一般ケア
-―血圧測定・バイタルサイン測定・体位変換
峯麻 紀子
1
1重工記念長崎病院 感染対策室 室長 感染管理認定看護師
pp.196-202
発行日 2020年7月15日
Published Date 2020/7/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000136
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はじめに
バイタルサイン(vital signs)とは,バイタル(生きている)サイン(兆候)の意味で,人間が生きているという状態を示す徴候(生命徴候)をいう。通常,バイタルサイン測定という場合には,血圧,脈拍,呼吸数,体温,および意識レベルの測定を指す。バイタルサイン測定は最も基本的な医療行為で,すべての診療科で外来・入院問わず行われ,かつ入院患者の場合,状態によっては一日に数回行われるなど頻度が高い。また,測定に侵襲的な処置は伴わないが,患者に医療従事者の手指や医療器具が直接接触するため,患者・医療従事者双方の交差感染に注意が必要である。接触による交差感染を防ぐ方法は,手指衛生と医療器具の清浄化などが考えられる。また,体位変換も病棟で行われるケアの中では頻度が高い。患者のADLが低く,自力で体位変換ができない場合,2~3時間おきにポジショニングが行われる。体位変換も医療従事者の手によって行われ,かつ,その手を患者の背中とベッドの間に差し込むなどの行為は,手の皮膚に摩擦を強く引き起こし,手荒れを誘発しかねない。手荒れをした皮膚はアルコール性手指消毒薬の刺激により,痛みが生じる。その痛みから手指衛生を躊躇し,結果的に手指衛生の実施回数が減る。よって,手指衛生を推進するうえで,手指の健康維持を同時に行うことが重要となる。本稿では,バイタルサイン測定や体位変換時に必要となる手指衛生のタイミングについて,WHO(世界保健機関)が提唱した5つのタイミングと対応させながら解説し,これを実践するための具体例として,当院(重工記念長崎病院)での取り組みを含め紹介する。
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