特集 海の外へ渡る航行者を診る—アウトバウンドにまつわるetc.
【渡航後の体調不良】
症例❷レプトスピラ症
飯田 康
1
1大阪市立総合医療センター 感染症内科
キーワード:
レプトスピラ症
,
腓腹筋圧痛
,
眼球結膜充血
,
感染症疫学
,
検体保存
Keyword:
レプトスピラ症
,
腓腹筋圧痛
,
眼球結膜充血
,
感染症疫学
,
検体保存
pp.1432-1436
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204574
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Case1
腎盂腎炎としては腑に落ちなかった軽症レプトスピラ症の1例
患者:81歳、女性。併存疾患に高血圧症があり、内服加療中。
現病歴:X-14日からX-6日までバードウォッチング目的にパナマへ渡航した。X日に倦怠感を自覚し、X+1日から37℃後半〜38℃台の発熱と嘔吐、軟便、右下腹部痛が出現した。X+3日には伝い歩きができなくなるほど倦怠感が強くなったため、X+5日に当科初診となった。来院時の第一印象はsickで、体温37.5℃、脈拍数81回/分、血圧83/42 mmHgであった。
身体所見:眼球結膜黄染・充血はなく、口腔内乾燥、右下腹部圧痛と右腎叩打痛を認めた。
血液検査:WBC 7,070/μL(Neut 91.3%)、CRP 22.89 mg/dL、PCT 2.27 ng/mLと炎症反応高値、BUN 40.5 mg/dL、Cr 1.15 mg/dLと腎機能低下を認めた。
尿検査:白血球(2+)、尿蛋白(2+)。
腹部単純CT検査:右下腹部と両側腎周囲の毛羽立ち像を認めた。
腸チフス、尿路感染症を想定し、セフトリアキソン2 g/日の投与を開始した。
入院翌日には解熱、その後炎症反応も改善し、入院6日目に腸チフスのカバー目的でレボフロキサシン(経口)に切り替え、軽快退院となった(図1)。抗菌薬投与歴がないにもかかわらず、閉塞機転のない尿路感染症で、グラム染色・尿培養結果が陰性など、尿路感染症としては腑に落ちなかったため、国立感染症研究所に検体を提出し、Leptospira interrogansの血清群grippotyphosaレプトスピラ症と診断した。
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