おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
14.インシデントレポートを転倒・転落の再発予防につなげる
宮越 浩一
1
1亀田総合病院リハビリテーション科
キーワード:
医療安全
,
インシデントレポート
,
転倒・転落
,
システム構築
Keyword:
医療安全
,
インシデントレポート
,
転倒・転落
,
システム構築
pp.1289-1292
発行日 2025年11月15日
Published Date 2025/11/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034121289
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はじめに:
病院における転倒・転落事故
医療にはさまざまな有害事象のリスクが伴う.有害事象の発生は治療成績を不良とし,患者の満足度は低下することとなる.また在院日数の長期化や医療コストの増大,さらに医療機関の信頼の低下等,病院経営や社会的な影響も大きいものとなる.有害事象の中で,転倒・転落事故は比較的高頻度に発生するものである.日本病院会のQIプロジェクト 1)において,医療の質を表す指標(Quality Indicator;QI)が測定され,その中で,転倒・転落事故の発生率も測定されている.転倒・転落発生率は,中央値2.61‰(/1,000人・日)(最小0.29~最大12.86‰)となっている.転倒・転落による影響としては, 出血や裂創, 骨折や脱臼, 頭蓋内出血が報告されている 2).骨折の中では大腿骨近位部骨折が多くを占めている.大腿骨近位部骨折は歩行等のADLに影響を与えることとなる.その他に頻度が高い骨折としては,上肢の骨折や肋骨骨折等が挙げられる.頭蓋内出血の頻度は比較的低いものの,複数の症例が死に至ったとする報告もみられる.日本病院会のQIプロジェクトの集計では,損傷レベル4以上の重大事故発生率は平均0.06‰とされている 1).転倒・転落事故は頻度や影響の大きさから考えて,有害事象対策の中でも特に優先順位が高いものとなる.転倒・転落事故の発生を皆無にすることは不可能であるが,可能な範囲で発生頻度の減少や影響レベルの低下が得られるような取り組みをすることが求められる.

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