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内容のポイント Q&A
Q1 非定型大腿骨骨折の概要は?
非定型大腿骨骨折(atypical femoral fracture;AFF)は,ビスホスホネート製剤等の特定の薬剤による骨代謝回転抑制を誘因とする特殊な骨折としてその疾患概念が世界中で広まった,非外傷性の多因子疾患である.特に東アジア地域では,主に「弯曲変形を主要因とする脆弱性疲労骨折(弯曲型AFF)」と「特定の薬剤による骨代謝回転抑制を主要因とする難治性骨折(典型的AFF)」の2つのサブタイプに分類し得る(Oh理論).
Q2 非定型大腿骨骨折の診断は?
AFFは,アメリカ骨代謝学会の症例定義(2013年改訂版)に基づいて診断される.大腿骨外側皮質骨に限局する肥厚像と不全骨折線が特徴的で,単純X線写真による診断が基本となるが,鑑別診断や早期診断にはMRI,骨シンチグラフィ検査,PET検査等も有用である.鼠径部痛や大腿部痛等の前駆症状がAFFを疑う転機になり得るが,無症候性のまま完全骨折化して初めて診断される場合も多い.
Q3 非定型大腿骨骨折に対する手術方法,後療法は?
完全骨折に至ったAFFの外科的治療に関して,プレート固定法はインプラント破損の報告が非常に多いため,髄内釘固定法がgold standardとなっている.ただし弯曲型AFFにおいては,骨形態と髄内釘の曲率ミスマッチがしばしば問題となる.典型的な転子下AFFは,手術の難易度と偽関節の危険性が高く,不全骨折の段階での予防的髄内釘固定がより推奨される.後療法に関する明確なエビデンスは存在しないが,髄内釘による強固な内固定術後であっても,一定期間の荷重制限が指示される場合があるので注意する.
Q4 非定型大腿骨骨折における注意すべき合併症は?
非定型骨折に限らず,大腿骨転子下骨折の整復内固定手術は難しく,変形治癒,遷延癒合,偽関節のリスクが高い.骨折治癒に不可欠な生物学的活性が著しく低下した典型的な転子下AFFはまさに難治性であるが,術者要因である骨折整復の「質」が髄内釘術後の骨癒合の鍵であり,解剖学的整復と強固な骨性支持を得ることで良好な術後成績が期待できる.近年,AFFに対する髄内釘固定後のインプラント周囲大腿骨近位部骨折が問題視され,頚部から骨頭内にスクリューを挿入しておくfemoral neck protectionの概念が広まりつつある.

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