最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
11.表面筋電図
井上 誠
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1新潟大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野
キーワード:
筋活動電位
,
筋張力
,
舌骨上筋群
,
同時記録
Keyword:
筋活動電位
,
筋張力
,
舌骨上筋群
,
同時記録
pp.398-405
発行日 2025年4月15日
Published Date 2025/4/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034040398
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背景と目的
筋活動電位は骨格筋を構成する筋細胞(筋線維)が興奮することで生じ,これを記録したものが筋電図である.嚥下関連筋活動は針電極,ワイヤー電極,表面電極等を用いて記録する.このうち表面電極を用いて記録するのが表面筋電図で,侵襲性も低く検査が可能である.嚥下時の活動記録のために咀嚼筋や舌骨上下筋群等を対象とした表面筋電図が広く用いられており,中でも嚥下の同定のために用いられているのは舌骨上筋群である.
表面筋電図記録は,電極貼付の簡便さの反面,対象とする筋の同定が難しい.たとえば舌骨上筋群の表面筋電図の場合,対象となる筋は顎二腹筋前腹,顎舌骨筋,オトガイ舌筋,内舌筋等を含むであろう.さらに,咀嚼と嚥下を記録する場合,筋電図の活動パターンのみで嚥下運動を同定することは困難である.記録対象となるのは皮膚に近い筋に限定されることから,表面筋電図のみで多様な病態を示す摂食嚥下障害の病態像を明らかにすることは不可能であり,表面筋電図のみを用いた臨床診断は行われていない.表面筋電図記録は,画像検査やマノメトリ,舌圧検査等の併用によって診断の補助に用いたり,異なる条件下での試行時の比較を行うことにより,同一被験者(患者)内の嚥下運動の違いを明らかにする等の実験的研究における活用が主となる.

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