Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
内容のポイント Q&A
Q1 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疾患病態は?
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では上位運動ニューロン徴候(腱反射亢進,痙縮,病的反射)と下位運動ニューロン徴候(腱反射低下,筋萎縮,線維束性収縮)が多髄節にわたって進行する.発症率は加齢とともに上昇し,男性が女性に比べて発症率が高い.症状の進行に伴い,四肢体幹の筋力低下,球麻痺に伴う運動症状,呼吸筋麻痺に伴う呼吸不全症状が出現し,加えて,認知機能低下,情動調節障害,身体各所の疼痛,抑うつ,倦怠感,睡眠障害等の非運動症状を生じることがある.
Q2 ALSの摂食嚥下障害の病態とは?
摂食嚥下障害は経過中ほとんどのALSで発症し,予後にかかわる要因として極めて重要である.舌萎縮や舌運動障害等による口腔期障害が先行する場合と咽頭筋力低下・嚥下反射低下・誤嚥等による咽頭期障害が先行する場合があるが,病状が進行すると,口腔期・咽頭期ともに障害される.早期から急速に進行する場合と長期に保たれる場合がある.呼吸筋麻痺による拘束性呼吸不全と摂食嚥下障害は並行して進行することが多い.
Q3 ALSの栄養障害の病態と予後への影響とは?
病初期のエネルギー代謝の病的な亢進が生命予後予測因子の1つであり,経過における体重やBMIの減少は,生命予後の独立した予測因子である.ALS診断後のBMIの増加群や積極的な栄養管理群では,より生命予後が良好であると報告されている.進行期にはエネルギー代謝は徐々に低下する.耐糖能異常を病初期から認めることがあり,進行期では,感染等を契機として高浸透圧性高血糖状態が出現することがある.
Q4 ALSの摂食嚥下・栄養障害の医療的ケアは?
リハビリテーションでは,直接訓練として食事のときの体位・姿勢,食形態,摂食方法等,患者の状態に応じて指導を行う.代償嚥下を自発的に身につけていることもある.間接訓練として廃用予防,可動域訓練,喉頭挙上訓練等を症状に応じて施行する.過剰な訓練は状態悪化の原因となることがあり,筋疲労には注意を払う.進行期の誤嚥防止術,栄養管理としての胃瘻の造設時期は生命予後に関連するため,早めに考慮するよう患者側に提案する.
Q5 ALSの摂食嚥下リハビリテーション・栄養管理のエビデンスは?
間接訓練の具体的な進め方のエビデンスは少ないが,臨床的には他動的口腔マッサージ・嚥下誘発部位の冷却刺激等は有用である.また,口腔装置・軟口蓋挙上装置等は口腔期障害の補助,上肢装具は摂食動作を補助する有用な手段である.ALSの経過における体重やBMIの減少は,生命予後の独立した予測因子である.また,ALS診断後のBMIが増加した患者群や積極的な栄養管理が行われた場合に,より生命予後が良好である.

Copyright© 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All rights reserved.