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背景と目的
反復唾液嚥下テスト(Repetitive Saliva Swallowing Test;RSST)は,1990年代にわが国で開発されたスクリーニングテストであり 1, 2),唾液を随意的に嚥下する機能を評価する.誤嚥のリスクがなく安全で,器具を用いないため簡便であり,スクリーニングテストとして最も多く使用されている.
『脳卒中治療ガイドライン2021』では,「飲食や経口内服を開始する前にスクリーニングテストを実施すること」が推奨されている(推奨度A:強い推奨,エビデンスレベル中) 3).『嚥下障害診療ガイドライン2018年版』では,「スクリーニングテストは,ベッドサイドなどで嚥下内視鏡検査を施行できない場合などは,機能評価法としての意義がある」 4)とし,嚥下機能評価のための簡易検査の1つとして最初にRSSTが記されている.さらに『要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017』では,「RSSTは,要介護高齢者のアセスメントとして有用である」 5)と記載され,介護保険領域においても頻用されている.
代表的なスクリーニングテストには,1982年に窪田らが報告した30 mlの水を使用した水飲みテスト 6)や,1999年に才藤らにより従来の水飲みテストを改訂したMWSTがある 7).これらは湿性嗄声やむせの有無を指標とし,プロフィールにより5段階で質的評価する.一方RSSTは,30秒間における嚥下反射の回数を計測し量的評価する.簡便性以外に回数という間隔尺度であるため,多くの臨床研究にも活用されている.さまざまな対象者でスクリーニングの感度・特異度が検証されており,小口らの報告 2)では,VFと比較した誤嚥の感度は0.98,特異度は0.66であった.鄭ら 8)は施設入所高齢者を対象とした調査で,感度は0.80,特異度は0.40で,特異度は低いもののスクリーニングテストとして極めて有用と報告している.
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