連載 脂質栄養学を盛り上げる 最新研究トピックス①
ビタミン様栄養素コリンをめぐる現状(1)
-コリンの栄養学的意義と現状の課題
三浦 豊
1
Yutaka Miura
1
1東京農工大学 農学研究院 応用生命化学部門
キーワード:
コリン代謝経路
,
コリン摂取量
Keyword:
コリン代謝経路
,
コリン摂取量
pp.548-552
発行日 2026年4月1日
Published Date 2026/4/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn148040548
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はじめに
コリン(トリメチルアミノエタノール)は,ビタミンB群に属するビタミン様物質である.欠乏症として脂肪肝が,過剰症として血圧低下,体臭変化などが知られている.コリンは神経伝達物質であるアセチルコリンの合成基質として作用するだけでなく,主要な細胞膜リン脂質であるフォスファチジルコリン(PC)の構成要素であり,さらにコリンの水酸基が酸化されて生じるベタインが生体内でのメチル化調節経路(一炭素代謝経路)において,ホモシステインからメチオニンへの再生時のメチル供与体として作用するなど,生体内で重要な役割を果たしている.わが国ではビタミン様物質として取り扱われ,摂取量に関する知見はほとんどなく,栄養素としての必須性はあまり認識されていないのが現状である.一方,米国をはじめとする諸外国ではコリンは必須栄養素として扱われ,推奨摂取量などに関する規定が策定され,栄養行政上も重要な栄養素とされている.生体内や食品中でコリンは,遊離コリンとして存在する以外に多くの化合物として存在しているが,日本食品成分表には収載されていない.また,各化合物の消化・吸収,代謝経路も複雑であるが,その全容は明らかになっていない部分が多く残されている.細胞への取り込みに関しても複数の輸送体が存在しており,その制御機構も複雑である.
本稿ではコリンの生理的役割や代謝の概要を解説し,その栄養学的意義とわが国におけるコリンを取り巻く現状と将来的な展望を紹介する.

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