特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅲ.トランスミッターの放出・取り込みに作用する薬物
アセチルコリン
五十嵐 康
1
Yasushi Ikarashi
1
1群馬大学医学部神経精神薬理学(ツムラ)講座
pp.441-444
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901632
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コリン作動性神経の伝達物質であるアセチルコリン(ACh)は,少なくとも神経終末でコリン(Ch)とアセチルCoA(Ac CoA)を基質としてコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)により合成される(図1-①)1,2)。この酵素は可溶性蛋白で細胞質に存在することから,AChは細胞質で合成されたのちシナプス小胞へ取り込まれると考えられている(ACh取り込み機構3),図1-②)。いくつかの神経系はコリン神経との間にシナプスを形成し,その神経活動を制御している(図1-③)4-6)。種々要因によってコリン神経に伝達されたインパルスはCa2+チャネルを開口させ,終末細胞質内へのCa2+流入を引き起こす(図1-④,⑩)7,8)。それが引き金となり,小胞内AChがエキソサイトーシスにより放出される(図1-⑤)1,2)。シナプス間隙へ放出されたAChは,後シナプス受容体に作用して伝達効果を発現する(図1-⑥)。また,コリン神経終末には前シナプス性ムスカリン受容体(自己受容体)が存在し,負のフィードバック機構を形成し,ACh放出量の自己調節に関与している(図1-⑦)9,10)。
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