治療のポイント
ビタミンB1の現状と使いわけ
奥田 邦雄
1
1久留米大内科
pp.542-544
発行日 1964年7月10日
Published Date 1964/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200366
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脚気特効薬ビタミンB1
ビタミンB1は元来抗神経炎ビタミンとして分離せられたものであるが,本邦では白米病すなわち脚気の特効薬として知られていた。いわゆる脚気が純粋なB1欠乏だけに起因するかどうかは明らかでなく,当時の国民の蛋白摂取不足などがその臨床症状に寄与していた可能性が強い。戦後食糧事情の改善とともに動物性食品の摂取が多くなり,主食としての白米の地位は変わらないのに脚気患者が減少し,最近ではきわめて異常な食生活環境下にある者をのぞいて,定型的な脚気症状を見ることはなくなつた。肉類を含む副食を十分に食べていれば,B1は耐熱性であり,白米を食べていてもB1不足を起こすことはない。
約20年前までは,下肢の倦怠感,腱反射の減弱,拡張期圧の下降,心濁音界の右方拡大,四肢末端の知覚鈍麻などのうち一,二の所見を認めれば臨床的に脚気ないし,B1欠乏症と診断し,B1を1ないしせいぜい10mgぐらいまでを投与したものであつた。また就寝後腓腸筋のけいれんを起こすことがあるとそれをB1欠乏症の初徴であると考える人もいk。最近外来患者の血液B1量を測定してみると,はっきりしたB1欠乏患者はまず見つからない。しばしばB1誘導体を内服していて異常に高い値を示す患者がある。
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