連載 臨床栄養をめぐるアルファベットストーリー⑧
H’s Story ~ハーヴィーを巡る血液
-Harvey’s Circulation of the Blood
雨海 照祥
1
Teruyoshi Amagai
1
1滋慶医療科学大学医療科学部
pp.424-438
発行日 2026年3月1日
Published Date 2026/3/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn148030424
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動物の体内における物質輸送は,初期には,体内の液体を介した“拡散”によって,栄養や代謝物などが細胞へと運ばれていた.しかし,体の構造が多細胞化・重層化し,代謝レベルも高まってくると,体全体の物質輸送を拡散だけでは賄いきれなくなる.そして,液体を流す通路としての血管が形成され,さらに血流を能動的に生み出す構造が発達することで,やがて心臓のような器官を含む“循環系”が,動物進化の中で誕生することとなった.
一例として,無脊椎動物である環形動物のミミズにおける体節構造を示す(図1).この図で注目すべきは,消化器系(腸),神経系とともに,それらに寄り添うように血管系が体節構造の中に配置されているという事実である.
動物進化の初期過程において,生命活動に不可欠な栄養の吸収を担う消化管様の構造が発達し,さらに,外界を認識して運動を調節するための神経系が発達してきた.消化管や神経系は,形態や構造は大きく異なるものの,刺胞動物や扁形動物から私たち脊椎動物に至るまで,共通祖先に由来する原型を共有していると考えられている.
一方,循環系は,虫やミミズ,貝やイカ・タコなど広く無脊椎動物にも存在しているものの,それらは単一の系統に沿って進化したものではなく,さまざまな動物群において段階的かつ独立に獲得されたと考えられている.循環系は,水流を利用して物質交換を行うクラゲや,体が薄く拡散によって物質輸送が可能なプラナリアなどでは必須ではなく,血管や心臓をもたない動物も多い.
今回は,血液を運ぶ流通系である“血液循環”,F’s Storyで登場の,クリスマス・レクチャーの小学校でのお話です.

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