連載 栄養支援に活かす! 行動医学・メンタルヘルス実践アプローチ⑤
ケーススタディから学ぶ 行動変容技法④ オペラント強化(随伴性マネジメント)
野崎 剛弘
1
Takehiro Nozaki
1
1中村学園大学大学院 栄養科学研究科
pp.799-807
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn147060799
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はじめに
肥満症患者などの治療において,食習慣や運動習慣といった行動を自ら変える行動変容は,薬物療法や外科療法に並ぶ重要な柱の一つです.しかし,患者さんが長年の習慣を変えることは容易ではありません.意志の力だけに頼るのではなく,科学的な行動変容技法を用いることが成功への鍵となります.今回ご紹介するオペラント強化(随伴性マネジメントとも呼ばれます)は,そのなかでも重要な役割を担う技法です1).
ここでいう「オペラント」とは,環境に働きかける自発的な行動を意味します.食べる,運動する,記録するといった日常の行動がその対象であり,その直後に得られる結果によって,行動の頻度が増えたり減ったりします.オペラント強化は,特定の行動の直後に「結果(随伴刺激)」が生じ,その結果によって当該行動の頻度が変化するという学習原理に基づいています.とくに,望ましい行動(例:食事記録の記載,間食の抑制,適度な運動など)の直後に「好ましい結果」を与えることで,その行動の実行可能性を高めることができます.簡単に言えば,「ご褒美によって行動を強化する」アプローチです.この技法は,患者さんが自力ではむずかしいと感じている行動を,楽しく,前向きに続けて,定着できるように支援するために非常に有効な枠組みを提供します.

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