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はじめに
本連載の第7回(2024年1月号)でお話しした通り,現在考えられているフレイルには2つの誤解があります.一つ目は,フレイルというのは痩せた高齢者のみが該当する,というものです.たとえば,Friedのフレイル表現型において,フレイルを規定する5項目の一つに,過去1年間で4.5 kg以上の意図しない体重減少があったかどうかという設問があります1).さらに,日本でフレイル評価に使われている基本チェックリスト25項目にも同様の項目があり,さらにはBMIが18.5 kg/m2未満かどうかを確認する項目があります2).そのため,「フレイル=痩せ」という認識が強いと思います.しかしながら,実際にはBMIが低い(20 kg/m2未満)人ばかりではなく,BMIが高い(27.5 kg/m2以上)人も,フレイルに該当する確率が高いことが日本人集団で明らかになっています3,4).
もう一つの誤解は,フレイルは高齢者特有の症候群である,ということです.確かに,フレイルの該当割合は75歳以上で年齢とともに高くなっていくのですが,働く世代においても,一定の割合でフレイルに該当する人がいることが明らかになっています.さらには,働く世代においてフレイルに該当する人ではその後の生存率が低いことがわかっています5,6).
これらのことから,メタボリックシンドローム(メタボ)とフレイルは相反する概念ではなく,メタボでありながらフレイルに該当する人もいることが推察されます.また,若い時代に筋量(除脂肪量)が多ければ,単純に高齢期のフレイルを予防できるかどうかは必ずしも明らかな事実ではありません.
最近では,中年期から高齢期への移行期間においては,「メタボ対策」から「フレイル対策」へのギアチェンジが必要と考えられています.その年齢は,65歳や75歳といった決まった年齢をさすわけではなく,個人差も大きいのが特徴で,わかりにくい部分もあります.
本稿では,メタボとフレイルとの関係性について,米国のウィスコンシン霊長類研究センターで25年間以上継続されたサルのエネルギー制限の研究7)の結果も踏まえながら議論したいと思います.
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