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summary
食道癌手術後の摂食嚥下障害は,発生頻度の高い合併症である.今回,手術前より低栄養のある症例に対して,手術前から手術後まで栄養介入を行い,合併症発生後もスムーズに経口摂取に移行した症例を経験したので報告する.
【症例】70歳代前半,女性.低栄養のある食道癌患者で,手術目的に入院.胸腔鏡腹腔鏡併用胸部食道全摘術,3領域リンパ節郭清を施行.術後,喀痰排泄障害による酸素化低下のため人工呼吸器管理となった.
【経過】術後,集中治療室に入室し,術後1病日から空腸瘻より成分栄養剤の持続投与を開始し,漸増させた.4病日に窒素バランス評価を開始したところ,-4.4 g/日であり,5病日に間接熱量測定による安静時エネルギー消費量が985 kcal/日であったため,目標栄養量を再設定した.7病日で一般病棟へ転棟し,活動量増加や手術侵襲による消耗で体重減少した分のエネルギー蓄積量を加味した,安静時エネルギー消費量×活動係数1.4+エネルギー蓄積量200 kcalで1,600 kcal/日を目標栄養量とした.13病日で言語聴覚士による介入を開始し,14病日より日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(以下,学会分類)のコード2-2の食事提供を開始.17病日に経腸栄養は終了.嚥下造影検査を施行し,18病日より学会分類コード3,水分は薄いとろみ付きの食形態に変更した.経口摂取での栄養補給量増加のためにコード3相当の食事で個別対応食を開始した.21病日に自宅退院となった.
【考察】本症例は術前外来で低栄養と診断され,栄養強化目的で栄養指導を行った.入院前の栄養介入情報を集中治療室担当の管理栄養士が受け取り,手術後の栄養管理に活用し,集中治療室での栄養介入情報を一般病棟担当の管理栄養士が活用することで,術前・集中治療室・一般病棟でシームレスな栄養管理を行ったことが,術後侵襲,合併症による消耗を最小限に抑え,経口摂取への移行をスムーズに実施できた一因と考えられる.
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