連載 イチから学び直す医療統計・第18講
因果推論
長島 健悟
1
,
近藤 雅大
2
,
佐藤 泰憲
2
Kengo NAGASHIMA
1
,
Masahiro KONDO
2
,
Yasunori SATO
2
1慶應義塾大学病院臨床研究推進センター生物統計部門
2慶應義塾大学医学部生物統計学
キーワード:
因果推論
,
因果効果
,
潜在的結果変数
,
傾向スコア
Keyword:
因果推論
,
因果効果
,
潜在的結果変数
,
傾向スコア
pp.528-537
発行日 2025年11月8日
Published Date 2025/11/8
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295060528
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統計的因果推論は,ある介入や曝露がアウトカムに与える因果効果を統計的に推測するための理論的枠組みである.近年の研究により,因果効果の明確な定義,および因果効果が推定可能となる条件等が明らかにされてきた.因果効果の定義には複数のアプローチがあるが,潜在的結果変数(potential outcome)を用いる枠組みが最も広く採用されている.また,因果効果の推定を可能とする主要な条件として,①個別的割り当て(individualistic assignment),②確率的割り当て(probabilistic assignment),③非交絡割り当て(unconfounded assignment)があげられる.因果推論の方法を用いて因果効果を推定することが目的となる場合,研究デザインの段階において,因果効果の定義を明確化し,推定可能な諸条件の成立を慎重に検討する必要がある.傾向スコアを用いた方法は頻用される因果推論の手法であるが,その定義や前提条件を適切に考慮しなければ,妥当な因果効果の推定は困難である.
本稿では,因果推論の基本的な概念と主要な手法を説明し,医学研究における応用上の留意点についても解説する.

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