連載 イチから学び直す医療統計・第15講
欠測データの解析手法
十島 玄汰
1
,
長島 健悟
1
,
佐藤 泰憲
2
Genta TOSHIMA
1
,
Kengo NAGASHIMA
1
,
Yasunori SATO
2
1慶應義塾大学病院臨床研究推進センター生物統計部門
2慶應義塾大学医学部生物統計学
キーワード:
欠測データ
,
共変量欠測
,
経時測定データの欠測
,
多重代入法
,
MMRM
Keyword:
欠測データ
,
共変量欠測
,
経時測定データの欠測
,
多重代入法
,
MMRM
pp.148-157
発行日 2025年10月11日
Published Date 2025/10/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295020148
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欠測とは,本来測定されるべきデータが観測されていない状態を指す.臨床研究において,すべての被験者のすべての測定値が予定通りに取得されることは稀であり,欠測は避けがたい問題である.欠測を適切に考慮した統計解析を実施しなければ,推定値にバイアスが生じたり,検出力が低下したりする可能性があるため,統計解析において欠測は重要な問題となる.
特に,回帰モデル等に用いる説明変数(共変量)が欠測している「共変量欠測」や,経時測定データにおいて被験者の脱落が発生することで目的変数が欠測する「経時測定データの欠測」は,臨床研究で頻繁に直面する課題である.これらの問題に対処する代表的な手法として,多重代入法や反復測定混合効果モデル(MMRM)がある.
これらの手法を正しく理解し,データの欠測メカニズムに応じて適切な方法を選択することが,妥当な結論を導くために不可欠である.本稿では,臨床研究でしばしば問題となる2つの代表的な欠測の状況を取り上げ,多重代入法やMMRMをどのように選択・適用し,信頼性の高い結論を導くか,その実践的な手順と考え方を解説する.

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