連載 イチから学び直す医療統計・第11講
相関と回帰
長島 健悟
1
,
近藤 雅大
1
,
佐藤 泰憲
2
Kengo NAGASHIMA
1
,
Masahiro KONDO
1
,
Yasunori SATO
2
1慶應義塾大学病院臨床研究推進センター生物統計部門
2慶應義塾大学医学部生物統計学
キーワード:
相関係数
,
因果
,
回帰分析
,
重回帰分析
Keyword:
相関係数
,
因果
,
回帰分析
,
重回帰分析
pp.603-610
発行日 2025年8月23日
Published Date 2025/8/23
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294080603
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
医療現場において,患者データの傾向を把握し,診断や予後予測に役立てるためには,変数間の関係性を正しく理解することが不可欠である.本稿では,日常診療や臨床研究で頻繁に用いられる統計手法である「相関係数」や「回帰分析」について,その基本概念と違いを整理し,実務上の留意点を概説する.
相関は,たとえば年齢と血圧,腫瘍径と転移リスクといった2つの変数間の関連の強さや方向性を示すにとどまるが,回帰分析は一方の変数から他方を予測するための数理モデルを構築する手法として,また,変数間の関係を調整したうえで定量的に評価する手法としても発展している.特に,単なる相関の存在が因果関係を意味するわけではない点,また,回帰モデルの適合度を数値のみで判断することのリスクについても注意が必要である.相関係数や寄与率といった指標の正確な理解と,データ可視化による直感的把握を併用することで,より正確かつ信頼性の高い臨床判断に資することが期待される.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.