連載 イチから学び直す医療統計・第17講
医学研究におけるベイズ統計学
長島 健悟
1
,
十島 玄汰
1
,
佐藤 泰憲
2
Kengo NAGASHIMA
1
,
Genta TOSHIMA
1
,
Yasunori SATO
2
1慶應義塾大学病院臨床研究推進センター生物統計部門
2慶應義塾大学医学部生物統計学
キーワード:
ベイズの定理
,
尤度
,
事前分布
,
事後分布
,
回帰モデル
Keyword:
ベイズの定理
,
尤度
,
事前分布
,
事後分布
,
回帰モデル
pp.316-324
発行日 2025年10月25日
Published Date 2025/10/25
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295040316
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ベイズ統計学とは,ベイズの定理に基づく統計的枠組みであり,事前情報と観察データから興味のある治療効果などのパラメータの事後分布を推定することを可能にするものである.頻度論的アプローチがパラメータを固定の未知量とみなすのに対し,ベイズ統計学ではパラメータを確率変数として捉え,その不確実性を確率分布として表現できる点に特徴がある.この柔軟な考え方は,既存の知見や専門的知識を事前分布としてモデルに取り込むことを可能にし,特にデータが限られている状況や逐次的な意思決定が求められる場面で有用である.一方で,ベイズ統計の結果は事前分布の設定に大きく依存するため,その選択の妥当性と透明性の確保が不可欠である.
本稿では,ベイズの定理を構成する主要な要素である尤度,事前分布,事後分布について,具体的な事例を交えながら解説する.特に事前分布の選択が推定結果に与える影響や,その可視化・感度分析の重要性について詳述する.また,医学研究におけるベイズ統計学の応用例として,ベイズ回帰モデルや階層ベイズモデル,逐次モニタリングなど,近年注目されている手法も紹介する.

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