連載 イチから学び直す医療統計・第16講
生存時間解析
長島 健悟
1
,
木村 流星
2
,
佐藤 泰憲
3
Kengo NAGASHIMA
1
,
Ryusei KIMURA
2
,
Yasunori SATO
3
1慶應義塾大学病院臨床研究推進センター生物統計部門
2東京慈恵会医科大学研究推進センター
3慶應義塾大学医学部生物統計学
キーワード:
生存時間解析
,
打ち切り
,
Kaplan-Meier法
,
logrank検定
,
Cox回帰モデル
Keyword:
生存時間解析
,
打ち切り
,
Kaplan-Meier法
,
logrank検定
,
Cox回帰モデル
pp.233-241
発行日 2025年10月18日
Published Date 2025/10/18
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295030233
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生存時間解析とは,ある基準時点から死亡や再発といった特定のイベントが発生するまでの時間(生存時間)を解析するための統計的手法の総称である.この領域の解析では「打ち切り」とよばれる不完全な情報を含むデータが避けられず,打ち切りを適切に扱うことが統計的推測の信頼性に直結する.たとえば,研究期間中にイベントが発生しなかった被験者や,途中で観察が終了した被験者は,打ち切りとして扱われる.打ち切りを無視した統計手法を用いて推測を行うと,結果にバイアスが生じ,誤った結論を導く可能性があるため,打ち切りを適切に考慮した統計手法を用いることが重要である.代表的な手法には,生存関数を推定するKaplan-Meier法,群間比較に用いるlogrank検定,共変量の影響を評価するCox比例ハザードモデルなどがある.これらの手法は,がん研究や心血管疾患の予後解析など,多くの臨床研究で広く活用されている.
本稿では,生存時間解析の基本概念と主要な手法を説明し,医学研究における生存時間解析を適用する際の留意点なども解説する.

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