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第1土曜特集 分子基盤に基づくメカノバイオロジーの臨床応用最前線
メカニカルストレスに起因する疾患――治療標的の同定に向けて
心臓におけるメカニカルストレス応答機構とその破綻による心不全発症のメカニズム
Mechanisms of mechanostress response in the heart and the onset of heart failure due to its disruption
伊藤 正道
1
Masamichi ITO
1
1東京大学医学部附属病院循環器内科
キーワード:
心不全
,
メカニカルストレス応答
,
線維化
,
ラミン遺伝子
Keyword:
心不全
,
メカニカルストレス応答
,
線維化
,
ラミン遺伝子
pp.898-903
発行日 2025年9月6日
Published Date 2025/9/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294100898
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心臓は生涯にわたりメカニカルストレスを受け続けるため,機械的刺激を生化学的シグナルに変換し適応する “メカノトランスダクション” 機構を備えている.正常範囲内ではこの応答は心機能維持に働くが,過度または持続的な刺激は心肥大,心不全,線維化を引き起こす.サルコメア関連タンパク群,介在板構造,細胞膜のインテグリン複合体やイオンチャネルは,張力の感知と信号伝達に重要な役割を果たす.また,線維芽細胞も張力応答により筋線維芽細胞へ分化し,線維化を誘導する.さらに,核膜に存在するラミンA/Cを中心とする核構造は,力学的刺激の最終受容体として遺伝子発現制御に関与する.筆者らは,心筋梗塞境界域でのCsrp3誘導がリモデリング抑制に働くこと,またLMNA変異によるTEAD1拘束が心筋細胞の成熟化不全をきたすことを報告した.これらの知見は,心疾患におけるメカノバイオロジーの重要性と,介入標的としての可能性を示唆する.

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