Japanese
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特集 新組織学シリーズⅥ:心臓
Ⅲ.心臓疾患のメカニズム
心肥大と心不全—適応と破綻
Cardiac remodeling in heart failure:when adaptation turns into dysfunction
候 聡志
1
Ko Toshiyuki
1
1東京大学大学院医学系研究科先端循環器医科学講座
キーワード:
心筋細胞
,
心肥大
,
心不全
,
線維化
,
DNA損傷
Keyword:
心筋細胞
,
心肥大
,
心不全
,
線維化
,
DNA損傷
pp.602-606
発行日 2025年12月15日
Published Date 2025/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760060602
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世界に先駆けて超高齢社会を迎えたわが国において,心不全患者人口は増加の一途をたどっており,2030年には心不全患者は130万人に達すると推計されている1)。心不全はほとんどの循環器疾患の行き着く終末期であるとも言え,世界的にも心不全患者人口の著しい増加は医療経済上の危機であり,心不全パンデミックとも言われる。心不全を引き起こし得る傷害の原因は高血圧,虚血,弁膜症,不整脈,心筋症などと多岐にわたるが,心臓はこうした慢性的な傷害や負荷に直面した際,心筋細胞の肥大化という形で代償性の適応を示す(図1)。この適応反応は当初,心拍出量を維持するための代償機転として機能して有益に働くが,持続的なストレス下では次第に機能的な破綻を来し,長期にわたり持続すると徐々にその限界に達し,構造的・機能的破綻を経て最終的には心不全へと至る。
本稿では,心肥大から心不全への移行過程を“代償性適応反応とその破綻”という観点から体系的に考察する。特に近年注目されている分子メカニズムと臓器間ネットワークに焦点を当て,最新の基礎研究と臨床的意義を橋渡しする知見を提供したい。

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