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特集 概日時計が制御する多面的な生理機構
概日リズム障害の病因論
-――体内時計に従わない生活を続けると何が起こるのか?
Etiology of circadian rhythm disorders
―― “If you constantly disobey your clock, what will happen?”
八木田 和弘
1
Kazuhiro YAGITA
1
1京都府立医科大学大学院医学研究科統合生理学
キーワード:
概日リズム障害
,
chronic jet-lag
,
MASLD/MASH
,
慢性炎症
,
個体差
Keyword:
概日リズム障害
,
chronic jet-lag
,
MASLD/MASH
,
慢性炎症
,
個体差
pp.839-846
発行日 2025年3月8日
Published Date 2025/3/8
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292100839
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概日時計(体内時計)は本来,地球上に生きる多くの生物にとって,“地球” という限られた環境で生きていくための適応機構として不可欠な装置であった.概日時計によって地球の自転周期を体内に同化し,環境変化を予測して生理機能を最適化する予測的適応が可能となった.しかし,ヒトにおいては自然のリズムからかけ離れた生活を送るようになったことで,自分の概日時計と生活時間との不適合が生じ,その結果として概日リズム障害(circadian rhythm disorders)という新たな病態が出現することになった.地球の自転周期を普遍的な時間単位として体内に同化する概日時計は,単なるリズム発振装置ではなく,生命活動の基盤となる細胞機能の秩序創出をも担っている.概日リズム障害に合併するメタボリックシンドロームや免疫機能障害,さらにがんなどは,いずれも細胞機能の異常といえる.細胞生理学的および細胞病理学的な観点から概日リズム障害の病因・病態を理解することは,概日リズム障害の未病介入や予防法の開発において不可欠な視点である.

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