バイオマーカーからみたアルツハイマー病の病態と診断 -――疾患修飾薬時代の診断基準

Pathophysiology and diagnosis of Alzheimer’s disease from the viewpoint of biomarkers ――Diagnostic criteria in the era of disease-modifying therapy

　アルツハイマー病（AD）に対するはじめての分子標的薬である抗アミロイドβ抗体薬が実用化され，背景病理を加味した診断・治療がはじまっている．2024年にアルツハイマー病協会（AA）から「ADの診断と病期に関する改訂診断基準」（以下，改訂診断基準）が発表された．この改訂診断基準では生物学的な変化に基づいてADを診断し，臨床的な評価を加えたうえで病期分類を行うスキームになっている．改訂診断基準ではバイオマーカーを，①AD病理を反映するコア・バイオマーカー，②ADに加えて他の神経疾患でも変動する非特異的バイオマーカー，③非AD併存病理を反映するバイオマーカーの3つに分類した．ADの診断はバイオマーカーに重点を置いた基準に移行しつつあるが，バイオマーカーの結果を適切に臨床応用するためには的確な臨床的判断が不可欠である．