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第5土曜特集 アルツハイマー病――研究と治療の最前線
臨床・治療薬
アルツハイマー病の診断基準の変遷と将来像
Chronological changes in the diagnostic criteria for Alzheimer’s disease and future prospects
井原 涼子
1
Ryoko IHARA
1
1東京都健康長寿医療センター脳神経内科
キーワード:
アルツハイマー病(AD)
,
NIA-AA診断基準
,
AT(N)分類
,
バイオマーカー
,
疾患修飾薬
Keyword:
アルツハイマー病(AD)
,
NIA-AA診断基準
,
AT(N)分類
,
バイオマーカー
,
疾患修飾薬
pp.1016-1021
発行日 2023年12月30日
Published Date 2023/12/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu287131016
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アルツハイマー病(AD)という病名は,1906年に最初の症例が報告されたのを契機に用いられるようになり,剖検脳において老人斑と神経原線維変化という2つの顕微鏡的特徴を有する,神経病理学的に定義される疾患を指すものであったが,生前に病理を特定することができないことから,いつしか臨床症状を主体とする診断基準へと変遷していった.しかし2000年代に入り,生前に病理学的変化を高精度に検出しうるバイオマーカーの発展がめざましく,2011年のNational Institute on Aging & Alzheimer’s Association(NIA-AA)診断基準には研究利用のためバイオマーカーによる診断が取り入れられた.さらに2021年には,ADの分子病態に基づいた疾患修飾薬が米国で承認されるに至り,診療においてもバイオマーカー診断を行う必要が生じた.2023年の改訂診断基準案では,ADを生物学的(病理学的)に定義される疾患としたうえで,病態に基づく診断基準を定めている.今後,ADの疾患修飾薬の選択肢が増えた場合,適応を決定するうえで病態診断区分は欠かせず,将来的に診療の場においても症状を切り離して分子病態のみでステージングを行うことが一般的になるかもしれない.
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