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連載 自己指向性免疫学の新展開――生体防御における自己認識の功罪・Vol.19
T細胞による自己・非自己認識の相克
-――ゆらぐ自己,曖昧な自己
Conflict between self vs. non-self recognition by T cells
室 龍之介
1
,
新田 剛
1
Ryunosuke MURO
1
,
Takeshi NITTA
1
1東京理科大学生命医科学研究所
キーワード:
胸腺
,
T細胞
,
胸腺上皮細胞(TEC)
,
交差反応
Keyword:
胸腺
,
T細胞
,
胸腺上皮細胞(TEC)
,
交差反応
pp.1142-1146
発行日 2024年12月28日
Published Date 2024/12/28
DOI https://doi.org/10.32118/ayu291121142
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SUMMARY
T細胞は獲得免疫系の中核を担う細胞であり,自己成分に反応せず,非自己を攻撃する.このようなT細胞の自己寛容的な性質は,主に胸腺における負の選択によって獲得される.自己寛容的なT細胞の生成には適切なT細胞受容体シグナル制御が必須である.また,髄質上皮細胞や線維芽細胞,さらに近年同定された模倣細胞といった胸腺ストロマ細胞集団が自己ペプチドを提示し,自己反応性T細胞を生体から取り除くことも重要である.一方,胸腺には,新たに生成されたT細胞の数にあわせて髄質上皮細胞の分化・増殖を調節する仕組みも存在する.一見して不要とも思えるこの調節機構は何のために存在するのだろうか.本稿では,不完全な負の選択が生体防御反応の最適化に必要であることを主張し,その理論を解説する.本稿を通して,免疫学的自己とは,一意に定まるものではなく,霧のようにゆらぎ,曖昧な存在であることを提唱したい.
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