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特集 活性酸素と酸化ストレス
がんとフェロトーシス
Cancer and ferroptosis
豊國 伸哉
1
Shinya TOYOKUNI
1
1名古屋大学大学院医学系研究科生体反応病理学
キーワード:
鉄
,
フェロトーシス
,
発がん
Keyword:
鉄
,
フェロトーシス
,
発がん
pp.263-266
発行日 2024年4月27日
Published Date 2024/4/27
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28904263
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がんと酸化ストレスの領域ではフェロトーシス(ferroptosis)が大きな話題となっている.がん医療はこの10年で大幅に進展し,ゲノム解析の結果が臨床に反映されるようになった.しかし,これでがんを完全に制圧できるかというとそうはなっておらず,1981年以来,日本のがん死亡率は今も増え続けている.科学に基づいたがん予防を真剣に考えるべき時期にきている.筆者は,がんは長年にわたり鉄と酸素を使用した副作用の要素が強いと考えている.地球上に鉄なしで生存できる独立した生命体は存在しない.鉄欠乏は貧血をきたすが,逆に鉄過剰はゲノムに変異を起こす土壌となり,発がんのリスクとなる.フェロトーシスは2012年に考案された用語で,“鉄依存性の制御性壊死で脂質過酸化を伴うもの” と定義されている.鉄はDNAの複製に必須であるため,がん細胞は多量の鉄を必要とする.発がんは,ゲノムの変異を通じてフェロトーシス抵抗性を獲得する過程と理解されるようになってきた.このことは逆に,鍵となる分子を薬剤で攻撃できれば,がん細胞特異的にフェロトーシスを起こすことができることを意味する.
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