特集 慢性腎臓病・透析患者の酸化ストレス―最新知見と治療展開
3.慢性腎臓病の病態と酸化ストレス(2)腎発がんにおける酸化ストレス
豊國 伸哉
1
1名古屋大学大学院医学系研究科生体反応病理学
キーワード:
触媒性2価鉄
,
フェロトーシス
,
酸化ストレス
,
腎癌
Keyword:
触媒性2価鉄
,
フェロトーシス
,
酸化ストレス
,
腎癌
pp.1558-1564
発行日 2020年11月10日
Published Date 2020/11/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000001533
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透析は腎細胞癌のリスクであり,囊胞性変化に伴うものと終末期腎に伴うものがある.慢性腎障害に伴う腎性貧血もよく臨床的な問題となるが,これはエリスロポエチン産生不全に伴い鉄過剰を誘導する鉄代謝の異常があることを意味する.筆者らは1980年代から過剰鉄と腎癌の関係を動物モデルで考究してきた.鉄ニトリロ三酢酸という中性で可溶性かつ触媒性を保有する低分子鉄を雄ラットに投与すると,近位尿細管特異的な酸化ストレスを誘発し,その反復投与によりほぼ全例で転移まで起こす高悪性度腎細胞癌を発症する.高率にp16Ink4aがん抑制遺伝子の不活化が観察されるが,これは発がん自体が鉄依存性を維持しながらフェロトーシス抵抗性を獲得する過程であることを示唆する.
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