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特集 フェロトーシス(鉄依存性細胞死)――そのメカニズムの解明と,治療への応用
フェロトーシスの制御によるがん治療への応用
Future application for cancer therapy targeting ferroptosis regulation
中村 俊崇
1
,
三島 英換
1,2
Toshitaka NAKAMURA
1
,
Eikan MISHIMA
1,2
1ヘルムホルツセンター・ミュンヘン
2東北大学大学院医学系研究科腎膠原病内分泌内科学
キーワード:
細胞死
,
グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)
,
フェロトーシスサプレッサータンパク1(FSP1)
,
過酸化脂質
Keyword:
細胞死
,
グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)
,
フェロトーシスサプレッサータンパク1(FSP1)
,
過酸化脂質
pp.164-169
発行日 2024年7月13日
Published Date 2024/7/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290020164
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フェロトーシスは鉄による多価不飽和脂肪酸(PUFA)の過酸化に依存的な細胞死様式である.がんの微小環境下や治療抵抗性のがんでは,細胞がフェロトーシスに対して脆弱になっていることが報告され,がん治療の新たな標的として近年注目を集めている.細胞内における過酸化脂質に対する防御機構として,主にグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)とフェロトーシスサプレッサータンパク1(FSP1)の2つの酵素が存在する.GPX4はグルタチオン(GSH)を用いて過酸化脂質を直接還元することで,FSP1はNAD(P)Hを用いてキノン(コエンザイムQあるいはビタミンK)を還元し,還元型キノンが脂質ラジカルを消去することでフェロトーシスを抑制する.がんの治療戦略としては,がん細胞のフェロトーシスを誘導または感受性を増強させること,あるいは抗がん作用を発揮する抗腫瘍免疫細胞のフェロトーシスを抑制することが考えられる.本稿では,①近年解明が進むフェロトーシスの制御機構,②がん細胞におけるフェロトーシス感受性,および③フェロトーシス制御を利用したがん治療への可能性と今後の期待について概説する.
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