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特集 フェロトーシス(鉄依存性細胞死)――そのメカニズムの解明と,治療への応用
アントラサイクリン心毒性におけるフェロトーシス
Ferroptosis in anthracycline cardiotoxicity
池田 昌隆
1
,
井手 友美
1
,
阿部 弘太郎
1
Masataka IKEDA
1
,
Tomomi IDE
1
,
Kohtaro ABE
1
1九州大学大学院医学研究院循環器内科学
キーワード:
フェロトーシス
,
アントラサイクリン
,
心毒性
,
ミトコンドリアDNA(mtDNA)
,
アミノレブリン酸
Keyword:
フェロトーシス
,
アントラサイクリン
,
心毒性
,
ミトコンドリアDNA(mtDNA)
,
アミノレブリン酸
pp.178-181
発行日 2024年7月13日
Published Date 2024/7/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290020178
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アントラサイクリン抗がん剤はその高い抗がん作用から,現在でも卵巣がん,乳がん,悪性リンパ腫など多くの悪性腫瘍に対する標準治療薬である.しかし,アントラサイクリンは用量依存性に心毒性を引き起こすことから,その総投与量は厳密に制限されており,また,いったん発症したアントラサイクリン心筋症は予後不良である.筆者らは,アントラサイクリンによる心毒性において鉄依存性の細胞死であるフェロトーシスが重要な病態基盤であることを明らかにし,アントラサイクリンによりフェロトーシスが誘導される分子機序の解明に取り組んできた.アントラサイクリンはアミノレブリン酸合成酵素(ALAS1)の発現を低下させることでヘムの合成障害とミトコンドリアの鉄代謝異常を引き起こし,その結果として生じるミトコンドリアでの余剰鉄がフェロトーシスの契機となっていること,さらにALAS1が合成するアミノレブリン酸を補充することでアントラサイクリンによるフェロトーシスに起因する心毒性を抑制することを見出し,現在,アントラサイクリン心筋障害に対する抑制薬としてのアミノレブリン酸塩酸塩の研究開発を進めている.
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