FORUM 死を看取る――死因究明の場にて・Vol.2
生と死の境界線②
大澤 資樹
1
Motoki OSAWA
1
1東海大学医学部基盤診療学系法医学領域
pp.331-333
発行日 2024年1月27日
Published Date 2024/1/27
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28804331
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生と死の境界線
現実の社会において,生と死の間には厳密な境界線を引いて区別する.しかし前回述べたとおり,それはかなり人為的なもので,その線の引き方には図1に示したような4つぐらいの考え方があるといえる.最も一般的で,日常的に看取りの場面で行われ,社会でも受け入れられているのが,三徴候説とよばれるもので,心拍停止・呼吸停止・瞳孔散大という3つの徴候を確認した時点を死とする考え方である.他には,完全死,脳死,安楽死を境界線とする考え方もある.そして,これらの境界線をもって人の死と判定して問題がないとする根拠が,“ポイント・オブ・ノー・リターン(point of no return)” とよばれる根本的な原則で,日本語では “蘇生限界点” と訳される.この時点を過ぎると,絶対に死しかありえない,もう二度と生に戻ってくることはない,という判断が死の領域に入ったと判定する根拠となっている.
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