招待席
境界を行き来するということ―キュアとケア、生と死
田口 ランディ
Randy Taguchi
pp.365-371
発行日 2008年5月1日
Published Date 2008/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101252
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小説の「アイテム」として消費されてきた「癌」
――新作『キュア』の発行おめでとうございます.癌を患った若手外科医が主人公の本作ですが,キュア(=治療)というタイトルに意外な印象を受けました.
田口 私がこれまで作家として,ずっとケアのことを追いかけてきたことをご存知の方は,「どうしてキュア?」って思うかもしれませんね.ただ,書き始めた段階では「キュア」というより,「癌をテーマにした小説を書きたい」ということが中心でした.ある癌患者の友人から「現代の文学は癌を消費しすぎている」ということを言われて,私自身,作家として癌を消費してきたことに気づかされたんです.
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