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これまでの気道管理の常識が変わる
茶木 友浩
1
,
山蔭 道明
1
Tomohiro CHAKI
1
,
Michiaki YAMAKAGE
1
1札幌医科大学医学部麻酔科学講座
pp.1095-1097
発行日 2023年6月17日
Published Date 2023/6/17
DOI https://doi.org/10.32118/ayu285121095
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麻酔導入時のマスク換気が必要なくなる?
全身麻酔導入時の気道管理として,意識消失・呼吸停止が得られてから気管挿管までは,マスクによる用手換気を行うことが当たり前の行為としてこれまで教育を受けてきた.また,麻酔導入後のマスク換気困難を予測する研究なども盛んに行われてきた.しかし,高流量経鼻酸素療法が麻酔科領域でも取り入れられ,マスク換気を行わない “apneic oxygenation” という手法が近年注目されはじめている.筋弛緩薬が投与され,自発呼吸が消失しているにもかかわらず,開存した気道に加温加湿した酸素を高流量で送気することによって低酸素に陥るまでの時間が延長し,さらに動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の上昇も緩徐化することが可能とされている.フェイスマスクによる10L/分の100%酸素投与と,高流量経鼻酸素カニューレによる70L/分の100%酸素投与を比較した研究が報告されている1).麻酔導入後,600秒間の無呼吸状態でも酸素化が得られた割合は,フェイスマスクでは15/28名(53.6%),高流量経鼻酸素カニューレでは25/30名(83.3%)であり,高流量経鼻カニューレを使用したapneic oxygenationによって長時間の無呼吸状態に耐えられる患者の割合が増加した(図1).また,本研究ではPaCO2の評価も行っており,高流量経鼻酸素カニューレ使用apneic oxygenation下では,中央値で600秒の無呼吸を強いたにもかかわらず,平均PaCO2が69.5mmHgと,ある程度の二酸化炭素排出能があることも示されている.
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