連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・39
日本の医療の常識は世界の常識ではない
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.540-541
発行日 2007年6月25日
Published Date 2007/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101033
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「神さま助けてください」
除細動器が当てられシュローの身体はベッドの上で浮き上がった。3歳の小さな身体が小刻みに震えている。心臓はまだ動かない。どす黒く変色したままの皮膚。かたわらについていた家族は処置のため少し離され,床にしゃがみ絶叫しながら神に助けを求めている。「もう1度!」。医師が指示を出しているのが耳の遠くで聞こえる感覚。また小さな身体は浮き上がり,やがて心臓は動き始めた。
シュローとは巡回診療で出会った。右腰背部から正中にかけて直径15cmほどの軟腫瘍ができている患者だった。わずか4か月で大きくなった。すでにつま先立ちでしか立つことができなくなっていて,蛙のように両足を開いてばっていた。かなり痛みもあるようだ。すぐに外見を撮った写真や現病歴をメールで送り,日本の医師に相談した。「脊髄由来の良性脂肪腫のようなものではないか? CTかMRIを撮ってみれば手術の方式なども考えられる。早期なら手術で摘出可能だろうし,希望はある」と予測が返ってきた。
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